執拗に愛されて、愛して
「なあ、そんな嫌?俺と結婚の事話すの。」

「…は?」


 嫌だったのはそっちじゃないのか。意味の分からない発言に耳を疑うと、雅はこちらに近付いてきて私の隣に座る。

 今までそんな話を出してきたこともない、そう言う雰囲気になっても一度もだ。


「ちょっと、冗談でしょ。そう言う話を雅からしてくるなんて。」

「別に俺は今は急ぐつもりなかったけど、あんな風に必死になって否定もしなくて良かったって話をしたかっただけ。けど、よくよく考えたら、いい機会だよなって。今の状況どう思ってんの?」

「…今は無理。考えられない。遠距離中でしょ。」

「前は遠距離になるって知っても迷わずに婚約してくれたのに?」

「ねぇ何が言いたいの。」


 いつの間にか顔の距離がどんどん近付いてきていて、唇の間に掌を挟んで入れる。いつの間にか変な風に口説かれている気がして、少し笑いそうになった。

 この流れで結婚の話なんて進められたら、面白おかしい思い出として終わってしまう。流石にこんな思い出を残しておきたいと思わない。

 雅と見つめ合って少しだけ笑うと、雅もふっと柔らかく笑みを零していた。


「流石に笑えるな。この感じで話すの。」

「こんな所で結婚しようなんて言われたら思い切りビンタしてた。」

「うわ、痛そう。」


 そう言いながら私の手首を掴んで掌を退けると、そのまま頬に口付ける。
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