執拗に愛されて、愛して
「…すごく今更なこと聞いてもいい?」

「何。」

「どうして大学時代、就職で傍を離れるって決めた時に一言くれなかったの?」


 そう問いかけると雅は特に表情を変えるでもなく私の顔を見ていた。

 あの時、決まってから聞かされたし、聞いても何も答えてくれない雅に対して、ずっと不安な気持ちがあった。今更聞いたからってもう何も変わるわけじゃないのはわかっているけど、どうしても自分の中で整理が出来ていなかった。


「プロポーズするって思ってたからかな。」

「…え?」

「夏帆の両親って、娘の気持ちよりまずちゃんとした人に娘を預けたいって人なの分かってたし、その為に大手企業に就職して、金貯めてちゃんとしなきゃなって思ってた。ただ、プロポーズもまだ何も夏帆にしてなかったからこんな計画話す訳にもいかなかったし、話したら夏帆が親なんて関係ないってキレるのも分かってたから。」


 自分の親を安心させて堂々と私と一緒になるためにいろいろ考えていてくれた雅の気持ちを知って、何と言っていいかわからなかった。

 そんな雅の気持ちを踏みにじって寂しさに耐えられず別れを選んだ私を、今になるまでどんな気持ちで想っていてくれたのか。
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