執拗に愛されて、愛して
「こんな湿っぽいの好きじゃねぇんだけど。」

「…わかってるけど…、どうしよう。何て言っていいかわからない。」


 当時の事を思い出して苦しくなって、涙をこぼしている私にあきれた様に笑って、そっと抱き寄せて肩を頭に預けさせると、そのまま優しく頭を撫でてくれていた。

 今頃このことに関して何の償いも出来ないし、それどころか酷い態度だってたくさん取った。それでもずっと好きだと今も傍に居てくれている。


「…ごめんね。」

「本当傷付いたし、彼女との結婚のためにくそみたいに忙しい会社に就職して俺の人生なんだろうなって、くそ病んでた。」

「ごめんって…。」


 私の申し訳なさそうな顔を見るなり笑うと「俺も、見栄張らずに言っとけばよかったんだろうな。元々格好いい人間でもなかったし。」と呟いていた。

 確かにどうしようもない人ではあったかもしれないけれど、私と一緒にいる間だけは、格好いい彼氏でいてくれた。大学の時も今も。

 恋愛経験もなくて、少女漫画やドラマから恋愛へのときめきや憧れを得ていた私を扱うのは、すごく大変だったと思う。


「…どうしようもない人に捕まったのは私の方だって思ってたけど、実はあんたの方だったのかもね。」

「…今更気付いた?」

「ここで調子に乗るの、本当おバカね。」


 そんな会話をして笑いながら、その日はずっとくっついて思い出話をしていた。どこにもいかず、懐かしい話をずっと。
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