執拗に愛されて、愛して
 時は流れて7月14日、支社での勤務を終え、広報部で送別会をしてくれるという話になっていた。まだ雅には来週帰るという話をしていなくて、送別会前の空き時間で雅に電話を掛ける。

 既に出勤しているかとは思ったけれど、落ち着いてようやく伝えられるようになったため、電話を掛けた。数コール程呼び出しをすると、音は止み『はい』と不愛想な声が聞こえてきた。

 今は客もいないのか、電話の奥から話声などはしない。


「久しぶり。」

『久しぶりじゃん、何か用?』

「あんたに良い報告してあげようと思って。」


 そういうと『良い報告?』と言葉が返ってくる。

 来週帰れると言ったら雅は喜んでくれるのかどうか、少しワクワクして「あのね、」と本題に入る。


「来週、帰れそうなの。あんたの誕生日の日に。」


 そう言うと電話先から中々声が返ってこない。
 さすがに無言は予想していなくて困惑する。


「ちょっと、無視は流石に感じ悪いんじゃないの。」

『…ああ、ごめん。聞いてるよ。』


 喜んではくれなくても『やっとか。』とかそんな軽口が返ってくると思っていたのに、雅の反応はおとなしいもので、あまり言葉を発さない。いつもと違うからこれじゃ調子が狂う。


「…嬉しいでしょ?」


 いつもなら自信たっぷりに言う言葉も今日は不安の声が出てしまった。自分が待たせてしまっていたことはわかっているけど、せっかくまた一緒に住めるようになるのだから、同じように嬉しいと思っていてほしい。
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