執拗に愛されて、愛して
 私の不安そうな声の後、雅の軽く笑うような声が聞こえてきて『夏帆は?』と質問返しをしてきた。こんな時いつもならそっちが聞かれてるんだから先答えなさいよなんて言ってしまいそうだけど、こんな時くらい素直になってもいいかと、その言葉は放たなかった。


「…嬉しい。誕生日のお祝いもできるし、待ち遠しい。」

『そっか、うん。俺も。』


 落ち着いた声でそう返ってきて、笑みがこぼれてしまうほどに嬉しかった。雅も同じ気持ちだとわかって、安心する。


「これから送別会開いてくれるらしいから、行ってくるわ。またね。」

『飲み過ぎんなよ。』

「大丈夫よ、自分のキャパぐらい理解してるもの。」


 そう言って電話を切る。

 この転勤が終わってから、また本社で働けるというわくわくよりも、また雅と暮らせるということに気持ちは浮ついた。元々出世が目的でこちらに来たはずなのに、今や会社での立場などよりも嬉しいことだった。
< 213 / 331 >

この作品をシェア

pagetop