執拗に愛されて、愛して
 1時間程経過すると、約束通り私の目の前に寝坊した男が現れ、腰を掛けた。謝罪の言葉よりも先に店員にアイスコーヒーを注文している、この男。


「1時間も待たせる?普通。」

「悪かったって。寝れなかったんだよ。」

「当たり前にここあんた持ちだから。」

「はいはい、仰せのままに。」


 本当にこういう時ある意味期待を裏切らない男に、溜息を吐く。

 雅が頬杖をついてからようやく私の顔を見て、目が合うとふっと笑いかけてくる。その顔の使いどころを分かっている様で、そんな表情を見せられると簡単に許してしまうの悔しい。


「おかえり。」

「…ただいま。」

「てかしばらく見ない内にまた綺麗になったんじゃね。」

「痩せたからかしらね。」


 自分で思い当たる節はないけど、5月病でやる気をなくし、夏の暑さでバテていたらあまりよろしくない減量の仕方に成功していた。綺麗になるような痩せ方ではないけれど、少しくらい体重は落ちた方が個人的には嬉しいので、喜んでおくことにする。


「もう痩せなくてよくね?抱き心地最高なのに。」

「はっ倒す、本当。」


 抱き心地最高、とはあまり言ってほしくない。それと外で堂々とセクハラ発言をするのは変わっていないようで、やはりこの男は一度訴えられるべきだと思う。

 雅の発言に溜息を吐いて、鞄の中に入れていた物の存在をふと思い出した。鞄の中に手を入れて、片手で掴めるサイズの箱を1つずつ掴むと、それをそのまま雅の前に出す。

 頬杖を突きながら目の前に急に出てきた2つの箱に少し驚いていて「なにこれ」と、箱に目をやっている。


「開けてみれば?」


 私の言葉でようやく頬杖をやめて、箱を手に取りそっと開いて中身を見ていた。
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