執拗に愛されて、愛して
 少し時間が経って落ち着いてきたが、まだ私の隣は空いたままだった。雅もとっくにシャワーを終えているはずなのに、中々寝室に来ない。時々生活音が聞こえてくる。

 リビングに顔を出しに行くのも気まずくて、大人しくベッドの中で待つことにした。

 待っていると15分程してから、雅は静かに寝室のドアを開けて中に入ってくる。時刻は既に6時前で、普段この時間は当たり前に雅は眠っている。

 雅に背を向けている状態で、雰囲気で何をしようとしているのか感じ取っていると、雅はゆっくりと隣に入ってくる。それから後ろから私の事を抱き締めて、頭を撫で始めた。

 さっきまで近付きたくも無いと言った態度を出していたくせに、雅の考えている事が分からない。


「…寝た?」


 そう話しかけてきたけれど、返事はしない。というより、声が出なかった。涙を堪えるのに必死で両手で口元を抑え、嗚咽さえも零さないようにする。

 さっきの態度から落ち着いて今度はこんなに優しくして来るなんて。最近こんな事無かったからこの男が狡い男であることを忘れていた。

 今は抱き締めてなんて欲しくないのに突き放せない。
< 227 / 331 >

この作品をシェア

pagetop