執拗に愛されて、愛して
「ていうかいつまで待たせる気?早く用意しなさいよ。」

「ちょうどいい所に来たって言ったのは、これ。服選んで、夏帆。」


 そう言いながら後ろから抱き着いてきて「ちょっと!」と、声を荒げると後ろから顔を覗き込んできて、悪戯っぽい笑みを向けてきていた。


「…早く離れて。」

「はいはい。決まったら渡して。」


 誰もまだ服を選ぶなんて言っていないけど、くらい言ってやりたかったのにもう私の話を聞く気が無い様で、洗面所の方に向かっている。

 確かに一緒に出掛ける時は雅の服を私が選んでいた。選ぶのも好きだったし、自分の好きな彼氏が好きな服装で一緒に出掛けてくれるのは最高だった。その時の事を久しぶりに思い出して、ワクワクはするけど少しだけ複雑だ。

 早く出掛けるためにも服を選んでしまおうと、クローゼットを開いて服に触れてどの組み合わせが良いかと悩んでしまう。

 結局複雑だなんだと言いながら始まってしまえばこの瞬間が好きなんだと自覚する。自分がおしゃれをするのはもちろん、人を着飾るのも。

 洗面所から戻ってきた雅に「ちょっとこっち来て」と呼び戻して、選んだ服を合わせると、見立て通り似合っていた。

 顔が良いのもあるけれど、スタイルも良いから大抵の服は似合う。


「はあ、イケメンって罪よね。」

「惚れそう?」

「顔だけね。」


 勘違いされない様に念押しすると、雅は笑っていた。
< 23 / 331 >

この作品をシェア

pagetop