執拗に愛されて、愛して
「はい、着替えてきて。」

「はいはい。」


 そう言って服を持って再度洗面所の方に向かう雅の背を見送った。

 今日は買い物にしこたま付き合わせて思いっきり飲んで帰ろ。明日も幸い休みだし。…仕事前に連れ出すのは少し可哀想だけど。と、考えて15分後、着替えとヘアセットを済ませた雅が戻ってくる。その時、私の見立ては間違えていなかったと確信する。


「ああ、本当黙ってたら惚れそう。」

「はは、間違って殴りそう。」


 そんなクズ発言は聞き流して、見た目の良さにうっとりする。今だけはどうやっても間違って殴る事ないでしょなんてツッコミも忘れる。
 
 見られる事にも慣れていて何とも思わないのか、財布やスマホをポケットの中に入れて、棚の方からアクセサリーを取り出して身に着けている。


「ていうか、ここに来るまで結構時間あったのに何をしてたの。」

「ごろごろして目覚ましてから風呂入っただけ。そんで髪乾かし終わったら、ちょうど夏帆来た。」

「迎えに来させといてごろごろとは本当良いご身分ね、あんた。」


 軽く肘で突くと、雅は「こっちの事情も関係無く急に誘ってきといて…、急いだ方だろ。」と文句を零していた。


「ていうか、あんたそもそも綺麗な顔してるからメイクもいらないし、どこに時間かけるの?」

「…強いて言えば風呂?」

「お風呂…。」


 ヘアセットとかでもなく、お風呂という言葉が出てくるのが羨ましい。私は服を選ぶのもメイクもヘアセットも全て時間が掛かるから、出来れば交換してほしい。


「お待たせ。てか、どこ行くわけ?」

「買い物。お礼に何でも買ってあげる。」

「まじ?恩って売っとくべきなんだな。」

「調子乗んな。」


 そんな会話をしながら一緒に家を出て、車を持っているらしい雅にそのまま車を出させた。外に行くと必ずと言って良い程お酒を飲むこの人が、一体車をいつ乗るのか疑問ではあるけれど。
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