執拗に愛されて、愛して
「普通旦那のそういう話聞きたくないもんなんじゃないの。」

「あんたのそういう話は退屈しないから。」


 雅の嫌そうな表情でそう言うのに言い返すと、玲くんは笑っている。


「夏帆ちゃんがたくましすぎる。」

「こんくらいじゃないとこいつの彼女の時点で逃げ出すわよ。酷かったんだから、出かける先々でこいつが女性に声かけられてどんだけ鼻で笑われたか。いまだにだけどね。」

「ええ、夏帆ちゃんレベルで鼻に笑われるなんて。その相手見てみたいけど。」

「もうすっごい美人。」

「なんなのお前ら。今しなくて良くない?その話。」


 雅がツッコむと、他の女性客が雅を呼んでいて蒸かしていた煙草の火を消して、伝票を持ってそちらに向かう。逃げ場が出来て少し安心している様に見えたけれど、女性客の方は顔を赤くして雅を見ている。

 どう見ても雅に会いたくてこのバーに来ているのだと見てすぐに分かった。変な客引きなんてしなくてもバーの前に数分奴が立つだけできっと、大抵の女性客は釣れてしまう。


「減らないよね、雅狙いのお客さん。」

「不倫なんてしたら慰謝料がっぽり請求しなきゃ。」

「本当たくましいね、夏帆ちゃん。」


 不倫なんて馬鹿な真似しないと分かっているからこんなに意気揚々と言える。もしその時が来たら、この発言の様に強く居られるのかはその時にならないと分からない。
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