執拗に愛されて、愛して
「夏帆ちゃん、実は結構嫉妬するでしょ。」

「しないよ。こんなので1つ1つ嫉妬してたら身が持たないし。」

「嘘が下手。」


 そう言いながら笑う玲くんは本当にやりにくい。私も揶揄いたいけど玲くんは本当に揶揄える要素が無い。

 時々玲くんを本当に好きで会いに来るお客さんはいるけど、玲くんはそんな女性との交際を断っている。誰とも交際をする気が無く、浮いた話が1つも無い。


「玲くんは結婚したいなとか思わないの?」

「思わない。俺は店が一番大事な男だから、他に大事な物が出来ちゃったら何かを蔑ろにしなきゃいけなくなるでしょ。だから1人で良い。」


 私は自分で割と仕事バカだと思っていたけど玲くんも中々の仕事バカだった。でもその気持ちはわかる。過去の私がそうだった。

 今も仕事が好きなのに仕事をセーブする事も覚えて、雅との事をちゃんとしようと思っているのに、どっちも中途半端になって、本来ならどちらも大切にしたいけど、上手くは行かない。


「…でも不思議と後悔は無いなあ。」

「え?」

「あ、ううん。こっちの話。」


 雅と結婚したことをまだ半年だけど後悔したことは一度も無かった。あの時雅がプロポーズしてくれなかったらきっと私はまだずるずると…。

 そこまで考えていると後ろから肩を掴まれる。


「夏帆、喉乾いた。奢って。」

「あんたのお小遣いから減らしていく。」

「ケチ臭い。」

「は?」


 結婚した事で財布を一つにしたので管理は私の上、私も雅もお小遣い制にした。お互い過去にしていた貯金もあるので、共有のお金以外も当然持っているけど、いまだにこの癖は直らない。
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