執拗に愛されて、愛して
「てか、夏帆ちゃん気付いてる?」


 そう言いながら首の後ろに手を回してきて少し身体を近付けると、にやけた気に入らない面を見上げて、目が合う。


「…何が?」

「美男美女カップルがいるってちょっと騒がれてんの。店員にもキャーキャー言われてんの気付いてなかった?」

「カップルじゃないから興味も無いわね。」

「まだ俺等お似合いだって事じゃん?縒り戻す?」


 雅の発言に軽く溜息を吐いて「さっさと離れて。」と少し低い声で言うと、そこでようやく距離を離してくれた。

 今雅とここまで空気感が良く楽しかったのは友人だからだ。恋人としての時間に何の興味も無い。


「未練たらしい男嫌いなの。そんなに納得いかなかった?振られた事無いのに、私に振られたのが。それならあの日の別れ話を今頃やり直して、私が振られてもいいわよ。」

「…やり直しなんかきくわけないだろ。バカじゃねぇの。」

「そんな事分かってんのよ、バカ。」


 冗談に真面目に返されて雅の頬を軽く抓った。

 それから例に向かってお会計をし、その荷物を持って約束通り一度車に戻る事にする。

 もしやり直しがきくなら、私は別れる瞬間じゃなくて、雅と出会ったあの瞬間からやり直したいと思っている。そしたら今度は、あんたの事なんか…、



─────好きにならないのに。
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