執拗に愛されて、愛して
 先に家に帰ってきていつも通りスマホを見ながら、雅の帰りを待っていた時だった。既に時間は朝4時。

 流石にそろそろ寝ようかなと、サブスクで入っている動画サービスで映画を探すのもやめた頃だった。朝5時まで時々店を開けている雅がこんなに帰りが遅くなるのもそんなに珍しくない。

 こうした日は休みの日でも碌に話せずに、そのまま土曜日になって雅はまた寝て起きて仕事に行く生活になる。寂しいかと聞かれればそんな事も無く、もう慣れていた。

 少し伸びてソファーから立ち上がっていつも通り用意してあるしじみ汁に気付く様に家の鍵を置くところにメモ書きで、キッチン、鍋、中、見てと残して私は電気をつけたまま寝室に向かう。

 ちょうどそのタイミングで玄関のドアが開く音が聞こえて、ふとリビングの方のドアを見るとガラスから廊下の電気が漏れてきて雅が帰ってきたことに気が付いた。それから手を洗ったりして、リビングに入ってくる雅と目が合う。


「おかえり。」

「ただいま、って何。寝るところ?」

「そうだけど。」

「帰ってきたし待っててよ。どうせこの時間まで俺の事待ってたんだろ?」

「そんなわけないじゃない。ばーか。」


 なんて私も随分素直じゃないと思う。可愛らしく待ってたと言える女でありたかったとも思うけどこの面倒な性格はもう直らないのだ。

 雅はそんな私を理解してるのかしてないのか分からないけどふっと笑いを零して、鍵をいつもの所に置きに行くと、メモ書きに気付いて視線を落としている。


(しまった…、急いで回収しておくんだった。)


 雅はそのメモを細くて綺麗な指で掴むと、口元にそのメモを持って行って少し笑って「いつもありがとう。」と言ってそのままシャワーを浴びに行ってしまう。

 な、なんだ、今の意味の分からない眩しい笑顔は。30の男が放つ眩しさじゃないだろう、と眩暈がしそうになる。
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