執拗に愛されて、愛して
 スマホに視線を落として20分経った頃、雅がバスタオルで髪を拭きながらリビングに戻ってくる。そちらに視線をやると、その雅と目があって何となく気恥ずかしくなってすぐに顔を逸らす。

 いつももしかしたら今日、そうなのかも…って意識する度にまだ慣れない。むしろ夫婦になってからの方がずっとずっと。


「…何?」


 雅はそんな私に気付かなくて髪を拭くために動かしていた手を止めて、問いかけてきていた。大体こういう時の私達はそういう話をしていなくても、そういう雰囲気に流されて、余裕も無くて…。最近はこの男に抱かれるのがずっとずっと恥ずかしい。


「何でも、無い。私、もう寝るから。」


 そう言って逃げるようにソファーから立ち上がって寝室に向かおうとすると、雅が直ぐに私に近付いて手首を掴んでくる。その時の顔がまたやけに、真剣だから、逃げられなくなる。


「逃がさないけど。一緒に寝るだけなら、待っててとか言わないだろ。」

「し、知らない!」

「何で最近の夏帆ちゃんは嫌がるかな。意識してんの?結婚して責任とってるし、何か問題?ここぐちゃぐちゃにされて、俺の、中に出してくらい、言えばいいのに。」


 そう言いながら手首を掴んでいた手はいつの間にか逃げられないように体を抱かれていて、そう言いながらお腹の奥にある所を指す用に少しだけ押してくる。この男は交際時から、こういう駆け引きの仕方をしてくる。

 こんな聞き方をして本当に嫌がってるかどうかを試しているのだ。

 普段は「夏帆が仕事大事にしてる事くらい分かってるから、時期は今じゃないのも分かってるし、それに、子供も無理しては欲しくないしな」なんて、私を気遣う様な言葉をかけてくる癖に、私達が夫婦として、じゃなくてただの男女になった時に、始まる。
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