執拗に愛されて、愛して
「朝比奈さーん?あれ、黒崎さん?どっちでもいいか。もう潰れちゃってるよ。」

「どうしよう、家分からないけど。どこかホテル取って休んでもらう?」

「旦那さん心配しない?無断外泊?」


 そんな声が周りでうっすら聞こえた気がしたけど、もうこの時には頭がグルグルして何が何だかも分かっていなかった。

 黒崎…?私の名前ですけど。

 誰かに支えられたまま、立たされているのは分かるけど誰か確かめる気力も無い。

 どうして、私こんなに飲んだんだっけ。部長の話に少し気持ち悪いなと思った印象だけは残っていて、それからヤケもあって…、どうでもいいか。帰らなきゃ。とそこまで考えて動こうとしても全く歩き出せはせず、身体が言う事を聞かなかった。


「朝比奈さん?スマホ借りますね~。」


 そう言いながらジャケットのポケットからスマホを取られて私の指紋すらも簡単に使われてスマホを開けられてしまう。それから女性社員の声が再度聞こえて「黒崎 雅…さん?この人かな、旦那さん。朝比奈さん自分で電話できます?」と問い掛けられるも返事する事も出来なかった。

 それからの記憶は、ほとんど残っていない。
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