執拗に愛されて、愛して
 また出て行こうとする雅の背に、聞こえるか分からない程の声で「も、一緒には住めないのかな。」と思わず言葉に出してしまっていた。

 その言葉は雅に届いたようで、私の方に少し驚いた表情で振り向く。


「…ごめん。疲れてたみたい。気を付けてね。」

「どういうこと。今の。」

「何でもない、ごめんね。」


 もうここで引き止めるのも、今更話したいというのも全部遅くて、雅の為にはならないのかもしれない。泣きそうになったのすら見られたくなくて、寝室に戻ろうとするとその腕を掴まれた。


「…何、出ていけって言いてぇの?」

「ここは雅の家だし、自由に帰ってきて。他の子の家に泊ってても何も言わないし。当然慰謝料とかそんな卑怯な話もしないから。」

「は?他の子?」


 私のその発言で何を言っているのか分かったのか、雅はまたあの時の様な怒っている表情をしていた。冷めた表情をしているけど、確実に怒っているのがわかる。


「本当、どうしたら分かんだろうな。俺、何か間違えてた?」

「……間違えてないよ。」

「本当、うざい。」


 そう言い残して私の腕から手を離すと出て行ってしまった。

 もう、ダメだ。全部全部どこかに捨てたくなった。自分の感情ごと、今までの思い出も全部。
< 290 / 331 >

この作品をシェア

pagetop