執拗に愛されて、愛して
 いつも通りの営業スマイルは、今は男性客に向けられていて何だか少しホッとする。

 きっと雅は、男女関係無く接していて、雅の方に特別な好意は無くて向こうが寄ってきている事も分かっているのに、今はどうしても他の女性と距離が近い所を見ると少しモヤモヤする。

 前までは仕事だしと思っていたのに、結婚してからは仕事だろうが何だろうが嫌だった。そんなことを思っていると雅がふとこっちを向いて、怪訝な表情を見せてから、少し男性客と何かを話してこっちに寄ってくる。


「玲、チェンジ。」

「…夏帆ちゃんと話してたの羨ましかったの?そう言いな?」

「バカじゃねぇの、さっさと行って。俺は今から休憩すんの。」

「人を休憩扱いだなんて良い身分ね。」


 玲くんを追い出して、雅は煙草を取り出して火を点けると、軽く蒸かす。

 今なら聞いてみても良いかな。

 家でだときっとまともに話なんて出来ない。


「ねぇ。」

「あ?」

「もし、大学時代の遠距離中、もっと会いたいとか寂しいとか言ってたら、あんたどうしてた?」


 顔でまた面倒な事考えてんなあと思っているのがひしひしと伝わってきた。

 仕方ないじゃない。気になるんだから。と開き直ることしか出来ないので雅の返事を黙って待つ。


「仕事辞めて地元で就職してたんじゃね?」

「…え?」

「ガキだったし、入社して1年未満の会社でも俺なら嘘吐いてでも辞めて、それでもなんとかなると思ってやめてそ~。」


 当時の事を思い出して話す雅が色々と話しては面倒そうな顔でありえないことを話していて誰の話をしているのかと思った。私を本当に優先なんてこの男にできたのか疑わしい。
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