執拗に愛されて、愛して
 それから私にスマホを渡してくると、そのスマホを受け取って耳に当てる。

 いきなり意味も分からず変わらせられて、困惑する。


「も、もしもし?」

『たいっっっっへん申し訳ございませんでした。』

「へ?」

『まさか俺の大寝坊のせいで雅さんが浮気疑惑なんて事態になっているなんて…。起きたら待ち合わせの1時間半後で、それに帰らず待っててくれただけなんです。雅さん。』


 颯くんの方を見ながら雅の方を見ると、呑気に爪を見ていてそれからこちらに視線を戻すと首を傾げていた。


「あ、いや…。こんなことに巻き込んで本当にごめんね。そんなつもりでも無かったというか…。」

『後日ぜひお詫びに行かせてください…。』

「いやいや、良いから。」


 苦笑いしてそのまま電話を切ると、雅は私の腰をグッと抱き寄せて「気は済んだ?」と問い掛けてくる。

 とにもかくにも浮気では無くて良かったし、疑ってしまって申し訳ない気持ちと、あの距離感をどこでも許せてしまっている雅にはやっぱりもやもやはする。


「…ごめん。」

「謝らなくて良いから、吐けよ。あんな人多い場所に夏帆は咲人を連れて何をしてたわけ?」


 その話が終わってないのを忘れていた。

 雅から顔を逸らすとグッと再度顔を向けさせられる。

 うまく逃げられない様で、私が必死の話さないようにしても、雅は怪しい笑みを浮かべて私を逃がす様子はなかった。


「夏帆ちゃん?隠し事は無し、じゃね?」


 その言い方に圧があって恐ろしい。
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