執拗に愛されて、愛して
 数週間後、玲くんから雅が出勤していない日の連絡をもらって、顔を出した。

 カウンターの中など、玲くん以外の従業員の姿を確認した所、雅らしき従業員は居ない。確認してから安心して玲くんの方を見ると申し訳なさそうな表情をしている。


「夏帆ちゃん、遅かった⋯、ごめん。」


 玲くんの目の前に座っているカウンター席を見るとよく見慣れた姿の男が煙草を持ちながらこっちを見ている。会いたくなくて、わざわざ出勤しない日を選んだはずなのに何でこの男がいるのか。


「よっ。」

「⋯帰る。」

「待て待て待て、来て飲まずに帰るのはマナー違反じゃねぇの?」

「あら、酒に酔った女の家に押しかけて抱くのはマナー違反じゃなくて?」

「自分を恨めよ、俺が100悪いわけじゃねぇだろ。」


 会って言葉を交わすだけですぐに喧嘩。そして絶対にこいつが8割は悪いのにド正論をかましてくるのがまた腹が立つ。

 どうにかしてこいつと寝たという黒歴史だけをお互いに抹消できないかなんて考えてしまう。


「せめてこいつを殺して亡き者に出来れば…。」

「自分でとんでもねぇ事言ってる自覚ある?」


 今だけはこの男を刺しても罪に問われない法律が欲しい。
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