執拗に愛されて、愛して
 それから数日後、サークルの新入歓迎会があった。人はそれなりに居て、この空気感に慣れない私は、隅の方でソフトドリンクをちょびちょびと口にしていた。

 友人も最初は一緒に居てくれたが、先輩方の方に呼ばれてしまって、その先輩と今は楽しそうに話し込んでいる。

 私はこういう場に打ち解けるのが凄く苦手で、どのグループの輪にも入って行けなかった。このままこっそり帰っても気付かれないかも。と、思いながらスマホを開いて時計を確認する。時計の長針は9時を差していて、そろそろ帰ろうと鞄を掴もうとした。

 その時空いていた隣の席に突然人が来て、私の手首を掴む。驚いてそちらを見ると、相手は雅だった。まさか気になっていた人がこんな風に近付いてきてくれるだなんて思っていなくて、それだけで鼓動が早くなる。


「もう帰んの?」

「え、あ、はい。」


 突然来て突然話し掛けられて驚きすぎて上手く話せないでいると、雅は「今帰られると寂しいから、もうちょっとだけ話してかない?」と、手首を掴んでいた手を、今度は私の手にやりぎゅっと握られた。


「あ…、でも、私、こういう場苦手で…。」

「俺も本当は大人数で話すより、2人で話す方が好き。」

「え、でもさっきあんなに囲まれてましたよね?」

「寄ってくるんだよね、何か。本当はずっと早く話してみたかったのに、おかげで来るの遅れた。」


 こんな特別扱い私だけじゃないって分かっているのに、雅も自分を気になってくれていたのだって、この時は浮かれた。
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