執拗に愛されて、愛して
 雅の住むアパートに入ってすぐ、電気も点けず壁に押し付けられて玄関先でキスをする。先程外でされた重ねるだけのキスでは無くて、食べられるように何度も私の唇を、雅の唇で挟んで、それだけでも段々ふわふわしてくる。


「…口開けれる?」


 雅にそう問われ、ゆっくりと口を開くと「いい子」と笑ってから、雅の舌が絡んできた。こんなキスした事なくて、上手く息が出来ないでいるとすぐに唇が離れた。


「…初めて?」


 そう問われ何と答えるか悩んで無言を貫いていると、雅は首を傾げていた。


「教えて、夏帆。」


 耳元で甘く囁かれる言葉と、呼び捨てにされている自分の名前を聞かされただけで、何故かゾクッとした。私きっとこの人の声も好きだったんだと思う。


「…初めて、じゃないけど、回数は多くないから、慣れてないかも…。」

「へぇ、初めてじゃないんだ。」


 雅の低い声が聞こえてきたけれど、私はこの嘘がバレない様にすることに必死だった。


「口開けて。キス中も息ゆっくり吸って吐かないと死ぬから、頑張って息して。」


 そう言って先程みたいな優しいキスでは無くて、激しく舌を絡ませられ、顔を逸らそうとしても逃げない様に捕まえられる。気のせいかもしれないけれど、何だか怒っている気がした。
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