執拗に愛されて、愛して
 それからキャンパス内を友人と歩いて、時々廊下などで雅とすれ違った。

 その度に照れくさくてわざと顔を合わせない様にすると、手をスルッと撫でられたり、ちょっとした悪戯を仕掛けてきた。

 お互いに恋人がいるというのを隠してはいないけれど、交際している相手が雅だという事も、向こうは私だという事も言っていなかった。というのも、交際を隠したいと私が言ったからだ。


「交際隠したい?何で?」

「雅先輩は…、その、凄くモテますし、そんな方と入学早々1年の私が付き合ったってなると、凄く目立ちますし…。」


 その時の雅の表情がイラっとしていたのを今でも覚えている。今思えば、私でも交際を隠したいなんて言われたら、多少イラっとするだろうなと思う。だけど、この時の私には平穏な大学生活が何よりも大事だった。


「じゃあ、夏帆はこれまで通り俺が誰かに迫られたりしても平気なの?俺は、夏帆が誰かに口説かれてても見て見ぬふりしろってこと?」

「自分の身は自分で守りますし!彼氏が居るというのは言っておくので口説かれないです!」

「…いつまでお子ちゃまな恋愛を想像してんだか。大学で相手が分からない彼氏を気にする奴なんかいないよ。」

「…雅先輩との仲を誰かに何か言われるのが嫌なんです。」


 そう訴えると、雅は頭を掻いて「分かった、じゃあその通りにする。」とこの時は物分かりの良いふりをして答えていたのに、大学内ではこの有様だ。

 すれ違った時に雅を睨みつけると舌をベッと出していた。悔しいけどあのクソガキ感あふれる表情が可愛くて、結局悶えさせられるのは私だった。
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