執拗に愛されて、愛して
 地元に戻ってからまっすぐ実家に向かうと、私も雅も両親とは久し振りの再会だった。事前に雅と最近再会して縒りを戻したという話はしておいたのだけど、本当に雅がこの場に来ると目をまんまるくして驚いていた。


「まさか最近出来た恋人が雅くんだったなんて…、いつの間にそんな事に?」

「ご無沙汰しております。たまたま最近再会して、お互いまだ好きだったみたいで。」


 表向きの笑顔で答えている。

 さすが元営業というべきか、愛想と話し方で安心させる様に話している雅に感心する。


「そんな偶然が起きるなんて、世間は狭いね。それよりも、さ、雅くん飲んで飲んで。」


 そう言いながら、お父さんは雅のグラスにお酒を注いでいる。会ってすぐにうちの両親の機嫌は既に良く、雅がいかに好かれていたか実感する。

 付き合っている時に両親に会ってくれたのは雅が初めてで、大学時代親に付き合っている人がいると言ったら、連れてきなさいなんて言われて、それに嫌がらず来てくれ、愛想も良いからすぐにうちの両親は雅を気に入った。

 別れたと言った時は「そう…。」と言いながら、両親も悲しそうな表情をしていてくれたくらい。


「あ、いただきます。」

「ちょっとあんま飲ませないで、この後も行く所あるし、顔見せに来ただけだけだからすぐ出るのよ。」


 そう言いながらお父さんを止めても、上機嫌に笑いながらお酒を注ぐだけだった。少し飲まされたくらいじゃ酔う男でも無いし、私の心配は杞憂だろうけれど。


「やっとこれで安心できるわ。結婚とかは考えているの?」

「まだ縒り戻したばっかりなのよ。結婚とかそんな早く考えられない。」


 そう話をして雅に視線を向けると、口元に笑みを浮かべているものの目が全然笑っていなかった。

 結婚の話をするとどうしても付き合っている時の事を考えてしまう。きっと雅も同じ気持ちだから、そんな表情をしていたのだと思う。

 あの時別れてなかったらこんな仮初の恋人じゃなくて、夫婦としてここに居た未来もあったのかもしれないが、もう今更そんなことを考えても私と雅が交わる事はきっともう無い。
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