執拗に愛されて、愛して
「はあ、疲れた。」


 旅館まで来て荷物を置きに来たけど、案の定旅館の部屋は一緒だった。この男が部屋を別々にしてなんて言って聞く様な男であれば、あんな事件はそもそも起きていないけど。


「あんたね、部屋別々にしてって言ったのに。」

「しないよ、一緒にここで飯食って酒飲んで寝るだけで何か問題?」

「いい年こいた男女なんだから問題だらけでしょうが。」


 先程受付で駄目元で部屋もう一部屋空いていませんかと聞いてみたけれど、空いていないと言われ仕方なく諦めた。

 どうしようもない事に時間を割いても仕方ないので、気持ちを切り替えて雅に話し掛ける。


「さて、お酒買いに行く?日本酒気になるし。」

「待って、着替えるから。」


 スーツのジャケットを脱いで、それをハンガーに掛けると箪笥を開けて浴衣を取り出していた。

 そのまま浴衣を取り出すと、こちらに開いて見せてきた。


「ここの旅館の浴衣着てこの辺なら歩く人多いらしいよ。浴衣で行かね?」

「へぇ、オシャレね。」


 この浴衣を着て歩くと言うのも醍醐味な様なので、受け取るなり着替えに向かった。

 問題も解決し、こんなに良い旅館に来たし、せっかくなら楽しまないと勿体ない。
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