お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
片や、同じオフィス内の離れた席では、保科さん達が「ルナ、すごい!天才!」「やっぱ才能あるよね!」とルナさんを褒め称えると、ルナさんは「そんなことないよ、今回もたまたまだって」と謙虚な態度を見せていた。

私達がそれを何気なく見ているとこちらに気付いたらしく、ニヤッと口角を上げ、意地の悪そうな表情を見せる保科さんと田巻さんが、私達の元へやってきて言った。

「あなた達さぁ、人から奪ったデザインで、よくもまぁあんなに喜べるよね。恥ずかしくないの?」
「ほんっと厚かましいったらないよね」

そこへ、離れたデスクから曽我課長も声を張り上げる。

「まあ、盗賊のボケナスだからなぁ、厚かましいのは当然だ、ハッハッハ。相手にするだけ時間のムダだぞー」

今までであれば、それに追随する声がちらほらあがっていたのだけど、なぜか今は他の人達からそれらを擁護する声は聞こえて来ず、オフィス内がしいん…と静まった。


すると、そこですかさず葵が口を開いた。

「そりゃー、小学生の頃からかわいがってきたキャラが会社のマスコットキャラクターになったんだから、生みの親なら喜びもひとしおなのは当然でしょ!逆に、なんでルナさんがそんなに冷静でいられるのか不思議でしょうがないわ」

「なっ…ルナだって喜んでるわよ!でも宝花さんの応募になってるから、それを遠慮してるだけじゃない!そんなこともわからないの!? ねぇ、みんなもそう思うでしょ!?」

負けじと保科さんも言い返し、皆さんへ同意を促したが…その返事はやはり聞こえてこなかった。


「典子、いいのよ。…皆さんもごめんなさいね。…もうこの話はやめましょう。せっかく多摩支店からの応募作品が新キャラクターに選ばれたんですもの……仲良くしましょ」

「ルナが言うなら…わかったわ。…じゃあ…もう宝花さん達にはこれ以上言わないわ。ルナに免じて許してあげるから」

「っだからあたし達は盗んでないって言ってるでしょ!」


「葵、いいから」

食って掛かろうとする葵を止めて保科さんへ向き合うと、その私の行動を見てなのか、一瞬にしてオフィスが静まり返った。


「何よ…」

「これで最後というのなら、私も最後に言わせてもらいます」

「あら、最後の言い訳?」

「私はそちらに許して頂かなくて結構です。というか、許してもらう理由がありません。〝まもるん〞は私が小学生の時に作ったキャラクターです。それは紛れもない事実ですし、証拠を見せろと言うのならいくらでも出せます。私の潔白を証明できるなら、正式に争うこともやぶさかではありません。…ですが、これ以上確執が残ってもいいことは一つもありません。本当にこれで嫌がらせなども終わらせると言うのなら、私は何もいたしませんが…どうされますか?」


「…っ…そんなの……ルナがもういいって言ってるんだから…こっちも何もしないわよ……ふん」

私の今までにない強気な言葉にグッと言葉に詰まった様だったが、保科さんはそう言うと、田巻さんを連れて私達の前から去っていった。

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