お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
あぁあっ!何故そこで手を離すっ!?
なんと、桜賀が用紙の下を持っていた手を離しちゃった!
早く隠してってば!っていうか気付いてないの!?
焦り始めた私とは裏腹に、葵が「あははっ!」と大きな声で笑った。
「まったく桜賀ってばドジだね~!あ~あ~、最後の最後でナツコの名前、出しちゃってるじゃないの」
「ちょ…っ葵!」
言わなきゃ分からないかも知れないのに!
って……
え?
まさか…桜賀、わざと……な訳ないよね……?
すると、回りからポツポツと声が上がり始めた。
「あの名前……ほうげ なつこ って……」
「もしや…ほんとに宝花さん…本人?」
「じゃ、あれ描いたのは宝花ってことか?」
それらの言葉を聞いた葵が、後ろを振り返りながら言う。
「そうですよ、このナツコの事ですよ。あたしも当時、〝ひびきくん〞て男の子にお守りをあげた話も聞いてましたからね。それと、証拠って訳じゃないけど、実家から小学生の時の自由帳持ってきたんで、見たらわかりますよ。…ほら、キャラクターの絵がわんさか描いてあるでしょ?もちろん〝まもるん〞もいるわよ。でもナツコの描くキャラはどれも顔は同じでね」
と、年季の入ったノートを開きながらさりげなく前の席の爽維くんに渡すと、それを見ながら〝藤間主任〞が話し出した。
「ほんとだ…これは間違いなく〝まもるん〞ですね。それに〝まもるん〞みたいなキャラクターもたくさんある……しかも、この年季の入ったノートだって昨日今日で作れる様な物ではありませんね…あー、この表紙の自由帳、懐かしいですね~、僕も小学生のころ使ってましたよ」
そう、さりげなくもガッツリと〝捏造品ではないですよ〞というフォローを入れて、近くの人達に回し始めた。
「ねぇ葵……それ、バカにしてない?」
「違うわよ、同じ顔なのに全く別のキャラクターって分かるんだから、褒めてんの」
「そう?……なんか微妙だけど…まぁいいや」
すると、後輩の宮田くんが「あれ?」と声をあげた。
「あの桜賀さんが持ってる紙の…宝花さんの名前の下に〔 家族だんらん いつも隣に 清酒 たからばな 〕ってコピーがありますけど……宝花さんの名字って…たからばなって書きますよね……もしかして…たからばな酒蔵と関係あったりします…?」
それにも葵が素早く反応した。
「おっ、宮田くん、目ざとい!そこまで勘繰られちゃ、もう隠し通せないわね、ナツコお嬢?」
「えっ!それじゃ宝花さんて、たからばな酒蔵のお嬢様とかいいます…?」
「そーよー、それにね、うちの親もナツコん家でお酒作ってんのー」
「わあぁ、葵ってば!」
「この際いーじゃない、宣伝しちゃえば」
「宣伝て…」
なんて話していると、少し離れた席では穏やかでない声が飛び交っていた。