お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
──週明けの月曜日。
今日から窓口スタッフ研修のため、葵と一緒に本社ビルに出勤。
「いよいよね。どんな人が来るのかしら~」
「きっといい人ばかりだと思うよ。社長も副社長も面接したみたいだから」
「ところで旦那は?どこにいるの?」
その問いに、葵の耳元で囁く。
「それはここでは内緒だからね」
「もちろん人前じゃ言わないって。…で、愛する奥様が本社へお出ましだというのに一体どこにいるのかしら。…と噂をすれば」
研修会場のあるフロアが8階なので、エントランス中央にあるエレベーターの方へ向かおうとした時、本社社員専用通路から響と川嶋さんが現れた。
私達の目の前には一列に並ぶ観葉植物があり、あちらからは見えなかったのか私達がいることに気付いていないみたい。
すると、私達の近くで川嶋さんが響の腕を引っ張りながら立ち止まった。
「もぉ響さんっ、歩くの早いってば」
「いや、普通だけど」
「私ケガしてるんだよ?」
「だから副社長室に居るように言っただろ。勝手に着いてきたのはそっちだ」
「でもでも!女の子を置いてくのはだめなの!響さんにはちゃんと私の面倒をみてもらわないとなんだから」
「それは仕事だけだ。それより、いい加減名前で呼ぶのもやめてくれ」
「え~?何で?」
「誤解されたら困る」
「誤解も何も、私達はそういう関係だし?」
「上司と部下だ」
「まぁ…会社だとそうなっちゃうか」
「とにかく誤解させるような言動は慎んでくれ。本当に困る」
「私は困らないけど?」
「俺が困る。…とにかく急ぐから川嶋は副社長室に戻れ」
「えっ、ヤダ!ちゃんとついてくからぁ」
そして響はため息をつくと「勝手にしろ」とまた歩き出し、その後を川嶋さんがついていった。
…そんなやり取りを目の当たりにし、何とも言い様のない冷たいモヤモヤが心に広がってくると同時に、葵が私の耳元で囁いた。
「奥さん…今のアレは一体何かしら…?」
それは、ビキビキと青筋を立てているのが容易に想像できる低~い声。
「…まぁ、さっき電車で言った通り、響の立場じゃ感情的に強くは言えないからね。…あれでも強く言った方だと思うよ、甘い顔も見せてないしさ」
「いや、ありえないっての。ったく桜賀も何してんのよ、あんな女に好き勝手させてさぁ。…ふむ、これは一言言ってやらないとね。…じゃ、ナツコはそこで隠れてて。いいわね」
そう言うと、葵はカカカカッ!とヒールの音を響かせ二人に駆け寄った。
今日から窓口スタッフ研修のため、葵と一緒に本社ビルに出勤。
「いよいよね。どんな人が来るのかしら~」
「きっといい人ばかりだと思うよ。社長も副社長も面接したみたいだから」
「ところで旦那は?どこにいるの?」
その問いに、葵の耳元で囁く。
「それはここでは内緒だからね」
「もちろん人前じゃ言わないって。…で、愛する奥様が本社へお出ましだというのに一体どこにいるのかしら。…と噂をすれば」
研修会場のあるフロアが8階なので、エントランス中央にあるエレベーターの方へ向かおうとした時、本社社員専用通路から響と川嶋さんが現れた。
私達の目の前には一列に並ぶ観葉植物があり、あちらからは見えなかったのか私達がいることに気付いていないみたい。
すると、私達の近くで川嶋さんが響の腕を引っ張りながら立ち止まった。
「もぉ響さんっ、歩くの早いってば」
「いや、普通だけど」
「私ケガしてるんだよ?」
「だから副社長室に居るように言っただろ。勝手に着いてきたのはそっちだ」
「でもでも!女の子を置いてくのはだめなの!響さんにはちゃんと私の面倒をみてもらわないとなんだから」
「それは仕事だけだ。それより、いい加減名前で呼ぶのもやめてくれ」
「え~?何で?」
「誤解されたら困る」
「誤解も何も、私達はそういう関係だし?」
「上司と部下だ」
「まぁ…会社だとそうなっちゃうか」
「とにかく誤解させるような言動は慎んでくれ。本当に困る」
「私は困らないけど?」
「俺が困る。…とにかく急ぐから川嶋は副社長室に戻れ」
「えっ、ヤダ!ちゃんとついてくからぁ」
そして響はため息をつくと「勝手にしろ」とまた歩き出し、その後を川嶋さんがついていった。
…そんなやり取りを目の当たりにし、何とも言い様のない冷たいモヤモヤが心に広がってくると同時に、葵が私の耳元で囁いた。
「奥さん…今のアレは一体何かしら…?」
それは、ビキビキと青筋を立てているのが容易に想像できる低~い声。
「…まぁ、さっき電車で言った通り、響の立場じゃ感情的に強くは言えないからね。…あれでも強く言った方だと思うよ、甘い顔も見せてないしさ」
「いや、ありえないっての。ったく桜賀も何してんのよ、あんな女に好き勝手させてさぁ。…ふむ、これは一言言ってやらないとね。…じゃ、ナツコはそこで隠れてて。いいわね」
そう言うと、葵はカカカカッ!とヒールの音を響かせ二人に駆け寄った。