お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「研修二日目、終了~!」
「今日は行けなくてホントにごめんね、後で聞かせて」
「謝らないでよ、仕事なんだからさ。例のお得意さんなんでしょ?舟山さんだっけ、あの楽しいおばちゃん。あたしも感謝祭の時に一度会ってるよね?」
「うん、その舟山さん。娘さんが結婚を機に保険の見直しをしたいらしくて」
「そこで頼られるとは、さっすが!」
「ふふ、ありがとう。頼られると本当に嬉しいよね」
「それで休み時間もプランニングしてたんだ」
「うん、作ってはあったんだけど、念には念をね」
「優秀な人はやっぱ違うね~」
「あはは、そんなんじゃないって。そこまで優秀じゃないから〝念には念を〞なの」
「まーそれはいいとして。じゃあ…」
と葵が声を落とした。
「式の打ち合わせは桜賀を駆り出すから、後で桜賀にも聞いてよ。ってか、昼の件も聞いてみなよ?」
どきん。
「う、…ん。話す時間があれば聞いてみるよ」
「まー、桜賀も忙しいんだろうけど?でも大事なことだしさ」
「うん…」
「けど、昼に上野さん達が言ってた通りで、あの桜賀がナツコ以外に気が向くなんてあり得ないんだから」
「そうかな…」
「そうかな、って何よ。自信ないの!?」
「んー…あると言えばあるんだけど…」
「もー!…っとと。つい声を張り上げちゃったじゃない。…大丈夫だからさ、ちゃんと話しなよ」
「うん、わかった。話してみる。…じゃあ私はそろそろ出るね」
「了解、頑張ってらっしゃいな」
「うん!」
今日は夜の7時から、葵と爽維くんの結婚式の打ち合わせがある。
私もブライズメイドという役をもらい、一緒に行く予定だったんだけど、舟山さんからご相談の連絡を頂いたので、打ち合わせは欠席することに。
私はブライズメイドなんて初めてのことで、何をするのか未だによく分かってないんだけど、そもそもブライズメイドも打ち合わせに参加するものなのかしら?
ま、私が知っておくことがあるのなら、明日、葵が話してくれるよね。
夜……響に連絡してもいいかな…
でも忙しいみたいだし…邪魔しちゃうかな…?
はぁ…
どうしてだろう、前よりも遠慮しちゃってる…
…ダメダメ!これからお仕事なんだから!集中集中!
両手でほっぺたをパチンと叩いて、駅へと急いだ。