お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

ん?

新婦、奈都子さん?

きょとんとしていると、会場から、響と私が好きな曲と、たくさんの人がいると分かる位の盛大な拍手が聞こえてきた。

そこへすかさず、葵が後ろからグイーッと力強く背中を押してきた。イタタ…

「床のライトの後についてくだけだし簡単よ!ほら、ナツコ、おじさん、行っといでー!」

「えっ、ちょっ、葵、これ、お父さんととか、ノリにしてはリアル過ぎない?まるで…」

「ンフッ、〝まるで〞じゃなくて、リアルの、結!婚!式!だもんねっ!ムフッ」


「えぇえ!? 誰の !?……って……まさか……」

「ほらほら早くしなって、桜賀が待ちくたびれちゃうよ」


てことは、本当に…響と私の…

「うっ、うん…」

葵に急かされ、入口でお父さんと並んで一礼すると、ゆっくり歩きだした。


あっ!じゃあ響も知ってたってこと!?

…だよね…

それにしても、まだ全容は見えていないものの、大勢の方が集まる結婚式だなんて、まるで私の理想みたいな…

って…もしかして葵が?

と理由を考えていたら、ポツリ、ポツリとお父さんの声が聞こえてきた。

「…奈都子も…もうお嫁さんか……まだまだ子供だと思っていたのになぁ…」

「お父さん…」

これが本当の結婚式なんだってわかったら、急に胸が熱くなって…もう泣いちゃいそう…

だから…

「えへへ、お酒だってたくさん飲んでるんだから、もう大人だよ」

なんて、涙腺を緩ませないように冗談めかしてみる。

「…そうだなぁ…うちの酒、好きだもんな、ははは」

「お父さん……来てくれて…ありがとう…」

「はは、かわいい娘の結婚式だぞ?何があろうと、いの一番に駆けつけるに決まってるさ」

「おとう…さ…」
だめだ…お父さんの気持ちがグッときてしまい、涙腺を緩ませてしまった。

「奈都子、そんなに泣いたら響くんに見せる前に化粧が取れてなくなるぞ?」

「へへ、そうだね。響にも見てもらわないとね」

「本当にいい人にお嫁に貰ってもらえて、父さんも母さんも嬉しいよ」

「うん、ありがとう、お父さん」


私達に当たっているピンスポットが眩しいせいか回りが余計に暗く見えてしまい、誰が誰だかハッキリわからないけど、あたたかい拍手で迎えて下さる皆さんに会釈をしながら歩いていたら、私達の歩く先の床を照らしていたもう一つのスポットライトが少し先でピタリと止まり、フッと消えてしまった。

おや?と思った次の瞬間、会場のありとあらゆる照明が一斉につき、ホール全体がパアッと明るくなった。
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