お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「…ここで大丈夫だから」
この角を曲がればもうマンションはすぐそこ。
だからそう言ったのだけど「ここまで来たら一緒だろ」と、マンションの前まで送ってくれた。
「あの、本当にありがとう。…わざわざ来てくれたし…寄ってく?お酒は出さないけど、コーヒーとかなら酔いも少し醒めると思うし」
「…いや、もう遅いし遠慮しとく。一応俺も男だしな。…っていうか、オマエは送ってくれた男をいつもこうして部屋に呼んでるのか?」
「えっ?いやいや、送ってもらうことなんてないし、部屋に呼ぶこともないよ。ほら、桜賀は前にも来たことあるし、今日だって元々うちで飲もうって言ってたし……だから桜賀には言っただけ」
「…そうか。…じゃ、しっかり休めよ」
「本当にありがとう。…あっ、桜賀」
「何だ?」
「帰りは女連れじゃないから声をかけられて大変だと思うけど、気をつけて帰ってね」
「…は?」
「だって、桜賀も声をかけられるのが面倒で困ってたから私を連れてたんでしょ?でもさ、よくよく考えたら、私は送ってもらったからいいものの、桜賀は結局帰りは一人なんだよね。ごめんね、私ばっかり…」
申し訳なくてそう言うと、桜賀が「はぁ……」とため息をつきながら片手で額を押さえた。
「…マジで頭痛ぇ…」
「えっ!大丈夫?…うちで休んでいったら?」
「……いや……オマエは黙ってもう寝ろ」
「でも…」
「今日はごちそうさん。じゃあ、また月曜な」
「あっ、うん、気をつけて…お大事に」
そう言って私は、来た道を戻る桜賀の後ろ姿を見送った。