お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
最後に私がオフィスから出ると、旧知の友であり同期の葵(あおい)が待っていてくれた。
「ほんとナツコって昔っから負けず嫌いってゆーか、しぶといってゆーか。勝てない勝負に毎月挑むとか、呆れを通り越してアッパレよ」
「葵までそれ言う!? 親友だよね!?」
「親友だから言ってんの」
ぐっ…
サバサバと全く悪気のない葵に、はぁ…とため息をついて言う。
「私、先月は舟山(ふなやま)さんから紹介を頂けてさ…。だから、たまたまとはいえ、今までにない位ずば抜けて好調だったから今回は絶対に勝てる!って思ってたのに……はぁ…桜賀を甘く見てた。まぁ…さすがだよね」
「あー、舟山さんて、ナツコのファンだって公言してる、あの楽しいおばちゃんだよね。…ま、確かに僅差なんて珍しいよね、桜賀相手によく頑張ったよ。ではこの葵サマが今日のお昼をゴチて進ぜよう。元気出したまえ」バシン!
「っ!」
せ…背中が…ッ…ゲホゲホッ!
葵は中学と高校の部活でバレーボールをやっていたからなのか、はたまた力の加減というものを知らないだけなのか、とにかく彼女の平手打ちはとても痛い。
「ケホッ…やっぱ持つべきものは親友だね。『珍しい』は余計だし、背中はめちゃくちゃ痛いけど」
「まあまあ。じゃ、うちらもそろそろ会議室に行こ。ミーティング開始まで10分切ったよ」
「ほんとだ、急ご。…ところで今日のお昼って私の好きなのでもいいの?」
「…ほんと、ナツコはいい性格してるよね、もうケロッとしてるし」
「エヘヘ、まぁね」と笑えば「褒めてないっつの!アハハ」と笑い返されるのもいつものこと。