お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

あれは──

小学3年の頃、実家の近くにある総合病院に入院してたおじいちゃんのお見舞いに行った時に出会った、細くて色白で、ぱっちりした目のかわいい顔をした小さな男の子。
たぶん私よりも年下だと思う。

車椅子に乗っていたその子は、病院の中庭で一人で泣いてたの。

大人になった今なら病衣を着ていることですぐに入院している子だと分かるけど、当時子どもだった私は『車椅子だし、足のケガで診察に来て迷子になった子だ!』としか考えられず、咄嗟に声をかけたんだ。

最初は泣いてばかりだったけど、少し落ち着いてくると、その子はここに入院していること、そして、手術を受ければ元気になれると言われてるけど、どうしても手術が怖い、ということを話してくれた。

その時に私は『この子の力になりたい!この子に元気になってもらいたい!』って思って、そこで考えついたのが〝お守りをあげよう!〞だった。

不安がなくなるように。
手術が成功するように。
もっともっと元気になるように。

私の祈りとパワーを込めたお守りをあげようと思ったの。

その男の子に「また明日来るね」と約束し、自宅に帰るとすぐにお母さんからA5サイズのメモ用紙をもらい、その子に宛てたメッセージを書いた。
そして、一番下の自分の名前の脇に〝まもるん〞を描き、メッセージを〝まもるん〞が喋っている様に、吹き出しで囲った。

それから、その子が好きな色だと教えてくれた緑色の大きな折り紙でお守りの袋を折ると、その中に、私の宝物として大事に取っておいた小さい四つ葉のクローバーの押し花と、メッセージを書いた紙を折って入れたんだ。

名前もメッセージも、全部ひらがなで書いたっけ。
小学校低学年くらいの子だから、漢字は読めないと思ってね。
特に私の名前は『ほうげ なつこ』ってすんなり読めないからね。


その子のお名前は『ひびき 』くん。
桜賀と同じ名前ではあるけれど、桜賀ではない。
年齢も、桜賀は私よりも年上だけど、ひびきくんはきっと年下だし、何より名字が違ったはず。
当時うちのお母さんが呼んでた、ひびきくんのお母さんの名字は普通に聞く感じだったことは覚えているから、聞き慣れない『おうが』ではないのは確かなんだ。



それでね。
そのメッセージと共に描いた、ホタルの妖精〝まもるん〞ていうのが、ほのかに道を照らしながら、いつも私達を温かく見守り、応援してくれるというキャラクターなの。

だから、お守りにうってつけでしょ?

そしてそれは、保険会社である【はるのかぜ生命】の企業理念にも合っていて、それなら〝まもるん〞はキャラクターとしてもいいんじゃないかな、と思ったんだ。

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