お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「へー、オマエ、そういうの好きなんだ」
〝まもるん〞を思い出していたら、頭上から桜賀の声が降ってきた。
「あれ、桜賀。おつかれ」
と声をかけると、躊躇なく私の右隣に腰を下ろした。
「おつかれ。オマエって絵、描くんだ」
「うん、想像して絵を描くのは昔から好きで」
「あたしらが小学生の時の児童会のキャラクターもナツコの案が採用されたんだよ。なんだっけ、四つ葉のクローバーがモチーフのだったよね」
「そうそう!それもあったね、懐かしい」
「へぇ、じゃあ今回のも採用されるといいな」
そんなこと言うなんて珍しい、と思っていたら。
「モチーフは『ボケナス子』から取ってナスなのか?」だって!
なっ!「違いますぅ!」
やっぱりこうなるのね…
「ハハハ!まぁ仕事も頑張り過ぎんなよ。ほら、これやるからちゃんと休め。じゃあな」
と、葵と私に栄養ドリンクを1本ずつ渡すと、桜賀はまたどこかへ行っちゃった。
「何しに来たんだろ。てゆーかさぁ、桜賀ってナツコのこと好きだよね」
「ブホッ、ケフッ」
葵のせいで、パンのかけらが変なとこに入っちゃった!
「大丈夫?」
「ケホケホッ…うん……大丈夫……」
トントントンと手のひらで胸を叩いて、マグボトルの冷たいコーヒーをゴクリと一口飲む。
ふー…
「桜賀ってさー、いつも営業スマイルで丁寧且つクールな口調であまり人を寄せ付けないのに、ナツコにはタメ口だし、大口開けて笑うし、遠慮なく何でもズケズケ言うじゃん。ナツコはあの営業スマイル、向けられたことないっしょ?」
「うん…だけどそれは逆じゃない?単純にナメられてるだけな気が…」
「ナツコは?」
「え?」
「桜賀のこと、どう思ってる?」
「どっどどどどうっ…て」
「風の又三郎か」
「はい?」
「いや、知らんならスルーで。…それで?桜賀のことは?」
「いやー…それは…ははは」
「やっぱナツコもそうなんだ」
「いやー…ははは」
「今度、家飲みでじっくり聞かせてもらうからね」
「いやー…はは…は…」
…今まで桜賀への想いは誰にも明かさずにきたけど、さすがにもう葵には言い逃れできそうにないかな…