お守りに溺愛を込めて～初恋は可愛い命の恩人～

実は、私の実家は【たからばな酒造】っていう歴史ある蔵元で、今は５歳上の兄が杜氏見習いとしてお父さん達と一緒に働いてる。
作ってるお酒は品評会で毎年何かしらの賞を頂いていて、名前は全国に知られてるんだ。

けど、実家が蔵元だというのは今は秘密にしてる。

大学生の時、アルバイトで一緒になった別の大学に通う同い年の女の子に世間話として何気なく言ったら、その人がいわゆる〝クレクレさん〞だったらしく、しつこくお酒をねだられたり、仕送りの食材まで目をつけられてしまって大変な思いをしたんだよね。

幸いそのバイトは短期の期間限定で、辞めてからは連絡も取らなくなったから、特に被害を受けることなく終わったから良かったけど、この一件で『これって安易に言っちゃいけないんだ』と身をもって学んだ私は、それ以来、家業のことは内緒にしている。



そして、同期で親友の 楢橋 葵（ならはし あおい）は、物心ついた時にはもう一緒にいた幼馴染み。

葵の両親は二人ともうちの酒蔵で働いてるから、小学校の時は一緒にうちに下校して、遊びも勉強も夕飯も一緒に、まるで姉妹の様に過ごしてた。
だから、葵と葵のご両親も家族同然の付き合いなんだ。


そんな私達は、昔から〝凸凹(でこぼこ)コンビ〞と言われてる。

顔で言えば、私はタヌキ顔、葵はキツネ顔。
髪型は、私はブラウンカラーのボブで、葵は綺麗な黒髪の背中まであるストレート。
体型は、私は155㎝のやや細身の撫で肩で、葵は173㎝のガッシリタイプ。
性格も、私はおっとり、葵はサバサバ。

ケンカというほどの事もしたことがないけど、言いたいことを我慢してるわけでもないの。
だから凸凹コンビなのに仲の良さは姉妹以上なのを、よく不思議がられるんだ。