お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
空のマグカップとティーバッグを持ってオフィスに戻った私を、葵が訝しげに見る。
「どしたの。…また何か言われた?」
「…あ、ううん。先客がいたから待ってたんだけど、なかなか終わらなかったから戻ってきちゃった。…リフレルームで休憩してくるね」
私はお財布とスマホを持って、オフィスからも逃げるようにリフレッシュルームへと急いだ。
……ほっ
リフレッシュルームに誰もいないことに安堵しつつ、自販機で小さめのペットボトルを買うと、窓際の椅子に腰掛けた。
まだ胸はバクバクと嫌な音を立てている。
考えたくなんかないのに…
頭の中はさっきの二人の会話しか出てこないなんて…
何なの私…
大好きなフルーツティーでリフレッシュしたいのに、今は何となくの甘さしか感じない。
…はぁ…
ため息をついた時、ジャケットのポケットに入れていたスマホが震えた。
見ると、画面にはメッセージ着信の表示。
葵かな?とタップすると、出てきたのは桜賀からの見慣れたメッセージだった。
〝今日、飯食いに行ってもいいか?〞
「………」
どうしよう。
会いたい。
けど…
会うのが怖い。
……どうしよう……
スマホを持つ手にグッと力が入ると、いきなりスマホがブルッと震えた。
ギャッ!
びっくりしつつ、今度は何…と見ると、葵からのメッセージだった。
『さっき桜賀が支店に来てたみたい。ルナさんと保科がそんなこと言ってた。知ってた?てか会った?』
…葵には言っておこうかな。
〝実は、玄関掃除の時に会ったんだ。挨拶程度の事しか話さなかったけど〞
『そうなんだ。それからは?』
〝今、桜賀からメッセージが来た〞
『夕飯のお願いでしょ?』
…何で分かったんだろう。
〝ご名答〞
『じゃあ今日は会うんだね、了解』
私の返事をわざと聞かずに、葵はメッセージのやり取りを終わらせた。
「はぁ…」
そうだよね、葵とも約束したもんね。次に夕飯のお願いが来たら会うって。
〝いいよ〞
嬉しさと、苦しさと……複雑な思いを抱えながら桜賀に返信すると、残っていたフルーツティーを飲み干し、またオフィスへと戻った。