お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
これって、高級焼肉デート!?
「それじゃあ行くか、そろそろ出ないと間に合わねぇからな」
あぁ…もうこんな時間か…
「…はい…」
お気に入りの腕時計で確認し、パソコンをシャットダウン。
「何だよ、暗いな。パアッと楽しくたくさん食って飲もうぜ!」
「…私のお金でね…」
今日は金曜日。
てっきり、うち(マンション)の近所の『焼肉はっつぁん』だと思ってたら、いつの間にか桜賀が予約しちゃってたよ、有名な高級焼肉店。
新宿なんだって。
「マジで腹減った。なに食おうかな……まずシャトーブリアンとザブトンは欠かせねぇよな」
「シャトぉっ!?……50…いや20gなら……ていうかザブトンて何ですか…」
はぁ…後でお金下ろしてこなきゃ。
いや…クレジットカードにしとこ。ポイントだって馬鹿にならないし!
ていうか、今日は一体どれだけの渋沢さんが飛んでいくのかしら…はぁ…
と、肩を落として桜賀の後ろを歩いていると「奈都子ちゃーん」と後ろから名を呼ばれ、振り返ると同時に肩をトンと叩かれた。
「奈都子ちゃん、元気出して。私が一緒に行って、半分出してあげるからっ」
「ルナさん…」
「あらら、そんなに落ち込んでいたら、奈都子ちゃんのかわいいお顔が台無しだよ?」
と、私のほっぺを優しくツンとつつくこの方は、〝多摩支店の女神〞という異名を持つ、総務の 鈴原 月(すずはら るな)さん。
私の4つ上だから今年29歳になる。
身長は160㎝位で私より少し高く、『清楚な美人』という形容が似合う大人の女性。
緩めのウェーブのかかったロングヘアが色気を醸していて、顔立ちからファッションから何から何まで『フェミニン系』の代表と言ってもいいくらい。
それでいて仕事もそつなくこなし、同僚達への細やかな気遣いなども半端ないという、本当に非の打ち所がない女性なの。
だから、ルナさんがまだ独身で恋人すらいないというのが不思議でしょうがない。
男性への理想がすごく高いのかもしれないけど、ルナさんほどの人ならそれも頷ける。