お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

「桜賀くん、私が奈都子ちゃんと一緒に払うから、好きなだけ食べていいからね!」

ルナさんが素敵な笑顔で桜賀の後ろ姿に話しかけた。
それは私も金銭的に助かるし、桜賀だって私だけを相手にするよりも、美人がいればさぞかし楽しい食事になるだろう。

うん…
きっと桜賀もその方が嬉しいに決まってる。


…すると、ルナさんの問いかけに桜賀がピタと立ち止まり、そして見せた、振り返りながらの黄金スマイル!

わぁ!眩しいね!神々しいね!
私には一度も向けてくれたことがないよね!


「お疲れ様です。鈴原さん、コイツを甘やかさないで下さいね。僕の命令は『奈都子が払うこと』なので、一人で出させてやって下さいね」


…ん?今『奈都子』って言った?
いや、『ナス子』の聞き間違いかな?
ていうか、一人称って『僕』だっけ?
などが頭の中でぐるぐるとメリーゴーランド状態。


「それじゃ、お先です。…さ、ナス子、行くぞ」


…ほらね。『奈都子』なんて言うわけがない。

ていうかさ、ルナさんと私への態度が違い過ぎない?
それに、黄金スマイルってそんな一瞬で消えちゃうもんなの?
私には余韻すら見せないと?

ムムム…と眉間にシワが寄りそうになっていると、「ナス子、早く来い。予約してんだから急ぐぞっ」と桜賀が私の肘を掴み、そのままスタスタ歩きだした。

「わぁぁ!痛い痛い!…あっルナさん、こんな格好ですみません、お先に失礼します!…いだだだだっ!痛い!」と後ろ向きのまま挨拶し、そのまま足がもつれそうになりながら玄関まで引き摺られるように歩かされた。

何なのよ、もう!


< 10 / 267 >

この作品をシェア

pagetop