お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

「……ちゃん、お待たせ。…なっちゃん?」

その声にハッと顔を上げると、目の前にパンツスーツ姿のお母さんが立っていた。

「あっごめんね、考え事してて…」

「ううん。じゃあ行きましょうか。でもホテルの中のどの辺なのかしら?来ればすぐに分かると思ってたけど、想像以上に広くって驚いちゃった。……あ、あの係の人に聞いてみよっと!」

お母さんは言った側から行動に移し、お見合い会場となる懐石料理のお店への行き方を聞いて戻ってきた。

「なんかね、あっちの建物の2階なんだって。エレベーターで行くと分かりやすいみたいよ」

貰ってきたのか、手にしているホテルのパンフレットを広げ、館内案内図を見せてくれた。
あっちの建物…あぁ、こちらの本館でなくて隣のラピス館てとこみたいね。


綺麗なブルーのグラデーションで彩られたエレベーターで2階へ上がると、目につく所に案内が出ていた。

「ラピス館は向こうだって、通路があるよ」
「あらほんと。それにしても本当に大きいわねぇ、さすが東京の高級ホテルってカンジ!」

わくわくしているお母さんに尋ねる。

「そういえば、お相手の方っていくつなの?」


そう、実はお相手について、私はまだ何も聞いていなかったの。
『事前に話して下手に先入観を持たれるのもイヤだから当日話すわね』って言われてて。

でも、もう当日どころか、あと数分で顔を合わせるんですけど。


「なっちゃんより2つ年上よ。ほら、昔、おじいちゃんのお見舞いで会ったでしょう?」

「おじいちゃんのお見舞い?」

「覚えてない?入院してた男の子と仲良くなったわよね?」

「…もしかして…」

「吉澤さんのとこの響くんよ、ほら、なっちゃんがお守り作ってあげた。忘れちゃった?」

「え!? ひびきくん!? あの、手術するって言ってた!?」

「ええ、そうよ」

「そうだったんだ……ひびきくん、元気になったんだね……良かった………って、え!? ひびきくんて年上だったの!?」

「そうよ。当時は体が小さかったらしいけど、今じゃ家族の誰よりも大きくなったそうよ」

「そう…」

年上だったんだ…
絶対に年下だと思って、お守りのメッセージを全部ひらがなで書いちゃったのは失礼だったよね。それはひびきくんにちゃんと謝ろう。


そっか、ヨシザワさんていうんだ、ひびきくん。
やっぱり桜賀とは違う人だったね。

…ってここに来てまで桜賀の事を考えるとか…
だめだな、私。

< 96 / 267 >

この作品をシェア

pagetop