お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「あ!ここね!」
懐石料理のお店の暖簾をくぐると、スタッフさんの案内でひとつの個室の前まで来た。
ひびきくんかぁ…
本当に久しぶりだもんね、お互いに面影すら覚えてなくて、初めまして状態になりそうだよね。
ひびきくん、どんな感じになってるんだろう…
あ、年上なんだよね。〝ひびきくん〞じゃなくて〝ひびきさん〞て言った方がいいのかな。
緊張する私をよそに、お母さんがモダンな格子戸をカラカラと開けて、広さのあるたたきへ上がると「吉澤さん、宝花ですー」と襖の向こうに声をかけた。
するとすぐに「はぁい」という女性の声がし、スッと襖が開くと目の前にいらしたのは、仕事着とは違う、華やかで上品なスーツ姿の吉澤副社長だった。
「宝花さん、奈都子ちゃん、本日は誠にありがとうございます」
「いえいえ、お礼を言うのはうちの方ですから」
なんてお母さんの挨拶もそこそこに、パンプスを脱いで行儀よくお部屋に上がると、ひびきくんらしき男性の後ろ姿が見えた。
落ち着いたネイビーカラーのスーツの彼は、大きなガラス窓の外を眺めている。
ホテルの中庭なのだろうか、日本庭園らしい和風のお庭が私からも見えた。
あれ?ここって2階じゃなかったっけ?2階なのにお庭が見えるの?何で?
とか、一瞬だけお見合いとは関係のない所に意識が行ってしまい、慌てて〝今はお見合いだからね!〞と自分に言い聞かせ、もう一度ひびきくんの後ろ姿を見る。
…わぁ、ほんとだ。
よく見るとスラリと背が高くて、この人があのちっちゃかったひびきくんだなんて、言われなきゃ絶対に分からないよね。
「響、奈都子ちゃんがいらっしゃったわよ」
その吉澤副社長の声の直後、母から〝ほら、先にご挨拶〞と言わんばかりに背中をトンと叩かれた。
あっ、そうだった!
「ご無沙汰しております。宝花奈都子です」
丁寧にお辞儀をしながらそう言うと、目線の先に、彼の足先がこちらに向いたのが見えた。
「待ってたよ、奈都子」
……え?
その、聞き覚えのある……いや、聞き慣れた声に頭をあげると、そこにいたのは他でもない…
「桜賀…」
だった。
「えぇ!!?」
驚きで大きく目を見開き口が塞がらない私を見て、桜賀が軽く握った手を口元に当てると、クックッと笑った。
「じゃあ私達は席を外しましょうか」
「そうですね」
「響、あとは任せたわよ。奈都子ちゃんもゆっくりしていってね」
「っあ、ハイ!ありがとうございます!」
副社長に言葉を掛けられたことで反射的に言葉が出ると、副社長は私に優しく微笑みながら、襖をスー…と静かに閉じた。
懐石料理のお店の暖簾をくぐると、スタッフさんの案内でひとつの個室の前まで来た。
ひびきくんかぁ…
本当に久しぶりだもんね、お互いに面影すら覚えてなくて、初めまして状態になりそうだよね。
ひびきくん、どんな感じになってるんだろう…
あ、年上なんだよね。〝ひびきくん〞じゃなくて〝ひびきさん〞て言った方がいいのかな。
緊張する私をよそに、お母さんがモダンな格子戸をカラカラと開けて、広さのあるたたきへ上がると「吉澤さん、宝花ですー」と襖の向こうに声をかけた。
するとすぐに「はぁい」という女性の声がし、スッと襖が開くと目の前にいらしたのは、仕事着とは違う、華やかで上品なスーツ姿の吉澤副社長だった。
「宝花さん、奈都子ちゃん、本日は誠にありがとうございます」
「いえいえ、お礼を言うのはうちの方ですから」
なんてお母さんの挨拶もそこそこに、パンプスを脱いで行儀よくお部屋に上がると、ひびきくんらしき男性の後ろ姿が見えた。
落ち着いたネイビーカラーのスーツの彼は、大きなガラス窓の外を眺めている。
ホテルの中庭なのだろうか、日本庭園らしい和風のお庭が私からも見えた。
あれ?ここって2階じゃなかったっけ?2階なのにお庭が見えるの?何で?
とか、一瞬だけお見合いとは関係のない所に意識が行ってしまい、慌てて〝今はお見合いだからね!〞と自分に言い聞かせ、もう一度ひびきくんの後ろ姿を見る。
…わぁ、ほんとだ。
よく見るとスラリと背が高くて、この人があのちっちゃかったひびきくんだなんて、言われなきゃ絶対に分からないよね。
「響、奈都子ちゃんがいらっしゃったわよ」
その吉澤副社長の声の直後、母から〝ほら、先にご挨拶〞と言わんばかりに背中をトンと叩かれた。
あっ、そうだった!
「ご無沙汰しております。宝花奈都子です」
丁寧にお辞儀をしながらそう言うと、目線の先に、彼の足先がこちらに向いたのが見えた。
「待ってたよ、奈都子」
……え?
その、聞き覚えのある……いや、聞き慣れた声に頭をあげると、そこにいたのは他でもない…
「桜賀…」
だった。
「えぇ!!?」
驚きで大きく目を見開き口が塞がらない私を見て、桜賀が軽く握った手を口元に当てると、クックッと笑った。
「じゃあ私達は席を外しましょうか」
「そうですね」
「響、あとは任せたわよ。奈都子ちゃんもゆっくりしていってね」
「っあ、ハイ!ありがとうございます!」
副社長に言葉を掛けられたことで反射的に言葉が出ると、副社長は私に優しく微笑みながら、襖をスー…と静かに閉じた。