お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「……………」
しばし流れる沈黙の時。
え、何これ、どういうこと?
一体、今、何が起こってるの?
ていうか、どこから突っ込んだらいい?
「奈都子、いつまで突っ立ってるんだ?座って話そうぜ」
それが硬直解除の呪文の様に、私の心に素直に働きかけた。
「…そうだね」
お座敷の真ん中にある木目のきれいな座卓を挟み、向かい合って座る。
わ、この座布団、ふっかふか!
うちのとは比較しちゃいけないほどの柔らかさと心地よい弾力に惹かれ、手のひらでその感触を楽しんでいると、「ふっ」と笑うような吐息が聞こえた。
あっ……この感じ、高級焼肉に行く時の電車でもあったなぁ、なんて思い出していたら、桜賀の声で我に返った。
「奈都子、余裕だな」
「ああっ、ごめん!つい座布団が気持ちよくて!」
「ふっ……まぁいいけど。ってか、ここに何しに来たか覚えてるか?」
「ああっ!そうだった!…って、どういうこと!?もう何が何だか訳がわからないんだけど!」
「…じゃあ、言うから」
「うん!」
この状況になった経緯をイチから説明して貰えるものと思い、力強く頷くと、桜賀が一度座り直し、姿勢を正して言った。
「奈都子、俺と結婚を前提に付き合って欲しい」
……ん?
……結婚を前提に…付き合う…?
「えっと…それは…どういうこと…でしょうか…」
「は?…わかんねぇの?」
「だから、何が?…どういうこと…?」
頭が追い付かなくて更なる説明を求めると、桜賀が顔を赤くした。…珍しい。
「っ…だから、奈都子が好きだから付き合いたいって言ってんの!しかも結婚前提で!」
……え?
「えぇ!? …すすすす好きぃ!?」
「そんなに目を丸くするほど驚くことか?」
「だっ!だっ!だって!そんなの全然分からなかったし!」
桜賀が頭のてっぺんをカシカシっと掻きながら言う。
「…あー…まぁそうかも知れねぇけど…」