告白[Confession of love]
 ゴールデンウィーク直前、俺は意を決して九条佐緒里にDM(ダイレクトメッセージ)を送った。

 『放課後の教室で、話したいことがあります』と書いて。

 九条はどんな気持ちで放課後を待ってくれているのだろう。そんな気持ちで彼女に何度か視線を送ったが、一度も目が合うことは無かった。

 ダメかもしれない——

 でも、もしかして……なんて、心のどこかで思っている自分もいる。

 そしてとうとう、運命の放課後がやってきた。


***


「ごっ、ごめんな、時間作ってもらって——」

「い、いや、大丈夫。——で、何の用かな?」

 九条にそう聞かれて、すぐに次の言葉が出なかった。

 彼女はきっと、俺が何を言うか想像は付いているはずだ。だが九条が、その言葉を期待しているようには、とても見えない。適当な事でも言って、逃げ出してしまおうか……そんな気持ちにかられはじめる。

 次の言葉が出ない、空白の時間——

 そんな二人の間に、校庭から部活の掛け声が聞こえてくる。

 そんな重たい空気を払拭すべく、俺は思い切って口を開いた。

「な、なんとなく、俺が伝えたいことは分かると思うんだけど……お、俺、九条の事……」

 やっとの事で絞り出した言葉に、一番大切な「好き」というワードは入っていなかった 

「も、もし、お付き合いとかのお話なら……私いま、付き合ってる人がいて……ご、ごめんなさい……」


 九条佐緒里には彼氏がいた——

 フラれる事は、ある程度覚悟はしていた。

 だが、彼氏がいたのは想定外だった。俺が知っている限りでは、高2の終わりまではフリーだったはずだったからだ。春休み中に何かあったのだろうか。

「そ、そっか。——ごめんな、放課後まで残って貰って」

「い、いや、全然……じゃあ、私帰るから……」

 九条はそう言うと、カバンを肩に掛け、教室を出て行った。

 俺の人生初めての告白は、見事に砕け散った——
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