君と始める最後の恋
 あまりスッキリしないまま午前中の仕事を終えた、昼休み。

 私は志織ちゃんとランチを取っていた。最近指導係の甲斐もあってか、プライベートな話も出来る程に仲良くなっていた。


「本当に付き合ってないんですか?郁先輩。私に嘘吐いてません?」

「吐いてないよ…。本当に私の片思い。」

「ええ、全然そんな風に見えないんですけど。」

「小川くんと志織ちゃんが見たものが本当だとしたら先輩は本来あのくらい優しい人なんだよってこと。」


 そう言いながら今日はガッツリとカツカレーを食べている。
 志織ちゃんは目の前で鯖味噌定食をチョイスしていた。

 せっかくの温かい料理が目の前にあるのに、私の言葉に口を開けて呆れてしまっている。


「郁先輩鈍感すぎません?もっと詰めて良くないですか普通に。嫉妬したんですよね?私の事好きなんですか?くらい詰めて良かったと思うんですけど。」

「…そんなの出来ないよ。」


 先輩が沙羅さんを好きな事などは、志織ちゃんには言っていない。

 私だけが知る、先輩の大事な気持ちだから誰かに簡単に話す事なんて出来ない。だから志織ちゃんからしたら、確かに先輩が私の気持ちを弄んでるように見えるのかもしれない。そうじゃないんだよと、言えないのがまた苦しい。
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