君と始める最後の恋
 半個室の居酒屋に向かって、店員さんに案内されるがまま行くと一ノ瀬先輩が中でお店のタブレットを見ながら待っていた。私に気付いて手を振るでもなくやっと来たかと言う様な表情をして、タブレットを置き型充電器に差し込む。


「一杯目いかがなさいますか?」

「生で。」

「あ、カシオレで。」


 そう注文を済ませると店員さんが出ていくと、一ノ瀬先輩と2人きりの空間が出来上がってしまった。


「遅かったじゃん、何かトラブル?」

「いえ、私のいつものポンコツが発動しまして…、志織ちゃんに助けてもらいました。」

「本当君たまにやらかすよね。」


 呆れた様に少し笑って、タブレットを渡して注文を促してくる。受け取ってメニューを開いていくつか食べたい物を相談しながら選んでいく。それから数分でお酒も届いて、乾杯をして初めての2人飲みがスタートした。


「というか、沙羅さん達と最近会えていないですけれど、お元気そうですか?お子さん生まれるのそろそろでしたっけ?」

「いや、予定日は冬。12月頃。お腹が重くて腰が痛くて辛いとは言ってるけど元気そうだよ。」


 沙羅さんはすごく気を遣う方だから、こんな時にお家にお邪魔してしまえば、お茶を出していただいたり動き回らせてしまう可能性がある為、最近会いに行くのを控えている。

 本当はすぐにでも会いに行きたいのだけれど、生まれてからお土産を渡すだけ渡しに会いに行こうと思っていた。
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