君と始める最後の恋
1人にしないから
「で、何もせずお泊り…ですか。」

「え、ぎゅーだよ?ハグだよ?」

「中学生の付き合いかよ…。郁先輩はピュアすぎて手出しづらい一ノ瀬さんの気持ちもわからなくはないか…。」


 何かを小さな声で呟いている。

 一体何事なんだろう。私からしたらハグはかなり進展した方なんだけど、志織ちゃんは何やら呆れている。


「先輩、つかぬことお伺いしますが、処女ですか?」


 志織ちゃんの質問に思わず咳き込む。

 そんな質問を会社でするなんて、どうかしている。

 私の反応を見た志織ちゃんが目を見開いている。


「え、嘘でしょ?」

「それは…!違うけど、聞き方とか場所とか考えて!」

「びっくりした、今私のがドキドキしちゃいました。」


 デリカシーのない志織ちゃん。話していると心臓に悪い。
 こんなの誰かに聞かれたくもないし、言いたくもない。

 それなりに経験があるからと言ってそれとこれは別だし、私達は付き合うまでもかなりの遠回りをしたからこのくらいでいい。いきなり先輩と距離が近すぎるとドキドキして心臓止まっちゃうかもしれないし。


「でも、もっと触れたいとか思いません?付き合ってたら。」

「それは思うけど…、でももういっぱいいっぱいというか…。」

「可愛い…、可愛いんだけど焦れったい…。」


 可愛いって言ってくれるけど、どこに可愛さを感じるのか。よくわからない。志織ちゃんの可愛いは基準が不明である。
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