君と始める最後の恋
「…鈍感な彼女持つって大変なんだな。」

「え?」


 何かを呟く小川くんに聞き返すと「なんでもありません」と言われてしまった。そんな言い方されると気になる。


「そのまますれ違ってくれたら俺にもチャンスあるかなって。あ、でも郁さんは何も考えないで俺の好きは流しててもらって大丈夫です。勝手に俺は好きって伝えるので。」

「…小川くん。」

「そんなの拒否する権利、誰にもないですよね?」


 そう笑って隣から私の顔を覗き込んでくる小川くん。

 確かに、無いけれど…。


「困るって言われても、それなら困れば?そのまま俺の事考えててって思うタイプなんで。それだけ伝えに来ました。」


 そう言うとそのまま給湯室を出ていく。

 何なんだ?

 なんとも言えない気持ちをぐっと堪えつつひとまずコーヒーを2つ持ってデスクに戻る。片方を類くんのデスクに置くと、類くんはふとこちらに顔を上げて「ありがとう」とお礼を言ってくれる。試しにじーっと顔を見つめてみるけど何もわからない。


「…?何、桜庭さん。」

「…化粧品何使ってます?」

「は?」


 かろうじて出た感想が肌綺麗だなだった。お泊りの時目立つ化粧品はないのに肌が羨ましいほどいつ見ても綺麗。

 気持ちを知るための参考にはならなかった。


「あ…、いえ。忘れてください。」


 そう言いながらパソコンに向き直す。


『君、結構好かれるの下手だよね。』


 いつしか類くんに言われた言葉を思い出した。

 こういうこと…?

 片思いが長かっただけに私が好きで居るのは当たり前だけど先輩に好かれるのは当たり前って思えていないのかも。他の人から見て分かるなら、そのわかりやすい愛が私にも欲しいと思ってしまうのは我儘なのだろうか。
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