君と始める最後の恋
 起きた頃には昼前。時計を見てやってしまったと感じた。

 隣に類くんはいない。どこに行ったんだろう。呆れて置いてっちゃった?

 寝室から出てリビングを覗き込むと、類くんの姿がない。ベランダの方に目を向けても居なくて寂しさを感じてしまう。

 どうしよう、まず連絡…?寝室にスマホを取りに行こうとしたタイミングで類くんが髪をバスタオルで拭きながら入ってくる。リビングに居ると思っていなかったのか、類くんが少し驚いた顔をしてこちらを見ていた。


「あれ、起きてる。おはよ。」


 挨拶をしてくれている先輩におはようとは返せず、そのまま抱きつくと少し驚いた様子で受け止めてくれた。


「どっか…行っちゃったかと思った…。」

「何で、行かないよどこも。君が寝てるのに。」


 そう言いながら安心させる様に私の頭をぽんぽんと撫でる。何でいつもこんな風に優しくしてもらえてるのに漠然と不安に襲われるんだろう。

 類くんが私の顔を少し上げさせるとじっとこっちを見つめてくる。


「俺が君のこと置いてどこかに行くような男に見える?」

「ごめん…なさい…。」

「責めてない。」


 そんな会話をして溜息を吐くと、類くんは少しだけ優しく微笑む。
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