君と始める最後の恋
「もう補佐じゃないし、2課にいる訳でもないのに。恋人だから何してもいいとか思ってます?」

「…そんなつもりは無いけど。」


 こういうの苦手なんだけど…。ただでなくても嫉妬でこっちは気が狂いそうだって言うのにそこまで敵視される覚えはない。

 それに特に会社での揉め事は苦手だ。どう言葉を返してこの場を鎮めようかと考えていると「君にそんなこと頼んだ覚えないけど」と類くんが給湯室に顔を出す。まさか聞かれるなんて思ってなかったのか補佐の子はかなり驚いた顔をしていた。


「俺、信用の無いどこの誰が入れたか分からないコーヒー飲まないから。郁に頼んでるのは俺が安心出来るからだけど、何か問題?」

「どこの誰って…、補佐じゃないですか。私。」

「補佐にしか頼んじゃいけない決まりあるの?」


 そう言い返されてその補佐の子は口を噤んでいる。

 類くんはいつもの隠す気のない面倒くさという表情を見せて溜息を吐く。


「補佐、変えてもらうから。私情挟んでトラブル起こすような人とやっていけない。」


 そういった類くんに涙目になって補佐の子はこの場を立ち去っていく。
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