君と始める最後の恋
────Side 郁
会議資料を完成させるために残業して周りはもう大分帰っていた。
類くんにも«今日は残業なので、早めにご飯食べてお風呂も入っちゃってくださいね!後片付けはおまかせあれ!☆»とだけ送り付けてスマホを閉じていた。会議の資料作成自体はほぼ完成ではあるけど、最終チェックを結絃としたくて残っていた。
慌ただしい足音が聞こえてそちらに目を向けると、しばらくすると結絃が会社に戻ってきた。
「あれ!?郁、残ってたのか…。ごめんな、残業させて。」
「違う違う、私が残らないと落ち着かないから残ったの。最終チェックだけお願いしてもいい? 」
「まじ助かる、早速ファイル開くな。」
そう言いながらデスクについてメールで送っていたファイルを開いている。結絃がファイルをチェックしてる間、スマホを開くと類くんから返信が来ていた。
«まだ会社なの?»なんて珍しくそんな連絡が来ている。
普段なら«お疲れ様»の一言で終わりなのに、珍しいな。
そう思いながら見ていると2件目が連投された。
«早く帰ってきて。»
今日の我儘類くん可愛い…。
思わずスマートフォンの画面を見て口元を緩ませてしまう。
「おいこら、口元ニヤけてる。彼氏?」
「へっ!?」
呆れ笑いしている結絃がこちらを見ていた。
「…うん、類くん。」
「本当、好きなんだな。彼氏の事。」
「大好きだよ。私がもしこの人生でする最後の恋は、この人が良いなって思ってる。」
「…そっか。」
結局最終的に告白してくれたのも類くんだったし、類くんのおかげで私達が今の関係でいられる。私達が恋人で居られるのは、不器用なりに沢山の愛をくれる類くんのおかげだけど、私も類くんの長い時間を貰えるなら、ゆっくり愛情を渡していきたいと思っている。
「…今日さ、水無月さんに郁と一ノ瀬さんの間を掻き乱すなって怒られたんだよね。」
「へ?志織ちゃんが? 」
「そ、可愛いよな。あの子。郁の為に怖いだろうに年上の俺に啖呵切ってさ。良い後輩。」
「そうなの!志織ちゃんすっごくいい子なの!口悪いし毒舌だから勘違いされやすいけどすっごく暖かい子なんだよ!」
「そうやって言える郁も俺は暖かくて好きだけど。」
そう言われてしまえば口を噤むしかない。
あれほど怒って来た相手に、よく好きとかそんなの言えるな…。気持ちに答えられないって分かってるのに。
「…俺がそんな困らせた顔させちゃってるんだよな、ごめんな。再会して嬉しくて、何も考えられてなかった。」
なんて悲しそうな声で言う結絃に思わず顔を向ける。少し口元に笑みを浮かべてるものの、あの日別れた時と同じ表情。
「…やめてよ、そんな顔するの。」
「ん、ごめん。本当、久々に再会したらあの時よりもすげぇ可愛くなってたし、すげぇ好きって思った。」
「…バカじゃん、早く忘れてれば良かったのに。」
「俺もそう思う。」
そう言って笑う結絃に釣られて笑った時だった。
会議資料を完成させるために残業して周りはもう大分帰っていた。
類くんにも«今日は残業なので、早めにご飯食べてお風呂も入っちゃってくださいね!後片付けはおまかせあれ!☆»とだけ送り付けてスマホを閉じていた。会議の資料作成自体はほぼ完成ではあるけど、最終チェックを結絃としたくて残っていた。
慌ただしい足音が聞こえてそちらに目を向けると、しばらくすると結絃が会社に戻ってきた。
「あれ!?郁、残ってたのか…。ごめんな、残業させて。」
「違う違う、私が残らないと落ち着かないから残ったの。最終チェックだけお願いしてもいい? 」
「まじ助かる、早速ファイル開くな。」
そう言いながらデスクについてメールで送っていたファイルを開いている。結絃がファイルをチェックしてる間、スマホを開くと類くんから返信が来ていた。
«まだ会社なの?»なんて珍しくそんな連絡が来ている。
普段なら«お疲れ様»の一言で終わりなのに、珍しいな。
そう思いながら見ていると2件目が連投された。
«早く帰ってきて。»
今日の我儘類くん可愛い…。
思わずスマートフォンの画面を見て口元を緩ませてしまう。
「おいこら、口元ニヤけてる。彼氏?」
「へっ!?」
呆れ笑いしている結絃がこちらを見ていた。
「…うん、類くん。」
「本当、好きなんだな。彼氏の事。」
「大好きだよ。私がもしこの人生でする最後の恋は、この人が良いなって思ってる。」
「…そっか。」
結局最終的に告白してくれたのも類くんだったし、類くんのおかげで私達が今の関係でいられる。私達が恋人で居られるのは、不器用なりに沢山の愛をくれる類くんのおかげだけど、私も類くんの長い時間を貰えるなら、ゆっくり愛情を渡していきたいと思っている。
「…今日さ、水無月さんに郁と一ノ瀬さんの間を掻き乱すなって怒られたんだよね。」
「へ?志織ちゃんが? 」
「そ、可愛いよな。あの子。郁の為に怖いだろうに年上の俺に啖呵切ってさ。良い後輩。」
「そうなの!志織ちゃんすっごくいい子なの!口悪いし毒舌だから勘違いされやすいけどすっごく暖かい子なんだよ!」
「そうやって言える郁も俺は暖かくて好きだけど。」
そう言われてしまえば口を噤むしかない。
あれほど怒って来た相手に、よく好きとかそんなの言えるな…。気持ちに答えられないって分かってるのに。
「…俺がそんな困らせた顔させちゃってるんだよな、ごめんな。再会して嬉しくて、何も考えられてなかった。」
なんて悲しそうな声で言う結絃に思わず顔を向ける。少し口元に笑みを浮かべてるものの、あの日別れた時と同じ表情。
「…やめてよ、そんな顔するの。」
「ん、ごめん。本当、久々に再会したらあの時よりもすげぇ可愛くなってたし、すげぇ好きって思った。」
「…バカじゃん、早く忘れてれば良かったのに。」
「俺もそう思う。」
そう言って笑う結絃に釣られて笑った時だった。