君と始める最後の恋
「何であいつが君に可愛いとか好きとか言えるわけ。しかもあの頃より可愛くなってとか何。そんなん、見なくてもずっと可愛いに決まってるし。」

「あ、あの。類くん、出血大サービスデイですか?今日。」

「本当ウザイ、何なの。何で俺が普段言えない事をあいつが言えるわけ。」

「言ってる!今、言ってます!類くん!」


 ひとまず落ち着かせようと宥めるも類くんの可愛い怒りは収まらない。そこまで不安にさせたかったわけじゃもちろんないけど、これはちょっと結絃グッジョブかも…なんて思ってしまう。


「俺のが好きに決まってる、誰よりも絶対、俺が君を一番好き。」

「…やばい、今日私死にます?命日?どうしよう〜!」


 シリアスな雰囲気なのはわかっているのに、いつもの数千倍素直な類くんに悶えが止まらない。今の録音したい…。と思えるほどには本当にレアな言葉だ。

 そんな呑気な思考回路は先輩に抱きしめられて止まる。その身体が酷く震えてたから。


「…もう何も言えないで誰かに奪われるのは嫌だ。」


 声までもが震えていて、ようやく類くんが不安になっていた理由を知る。

 初恋で類くんは素直になるのが少し遅すぎて、沙羅さんに言えないまま充さんと沙羅さんが交際して、気持ちを伝えられなくなった。類くんは、その時の事をずっと悔やんで引きずってたんだと思う。今回も素直になれなくて、素直に言えた結絃に私が取られると思ったらしい。

 そんなこと、あるはずがないのに。
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