君と始める最後の恋
 類くんの言う通りに、手洗いと着替えを済ませると類くんはキッチンで温かい飲み物を入れていてくれた。

 その姿を見るのも久しぶりな気がして類くんの近くに寄って後ろから抱き着く。

 今度は避けずに何事も無い事の様に相変わらず飲み物を入れている。

 この塩対応ですら今は久しぶりで愛おしい。

 そもそも抱き着ける事なんて最近無かったから至福の時過ぎる。


「類くん、好きです~!」

「何、酔っ払い?」

「酔っぱらってません~!」


 そう言いながら顔を覗き込んで少し笑いかけると、類くんは慣れた様に私の頭をポンポンと撫でて身体を離させると飲み物をテーブルまで持っていく。

 ちゃんと私の分まで入れてくれてるの愛でしかないんですが…。

 そんなことまで嬉しくて、ソファーに座る類くんの隣に私も座って、温かい飲み物を貰う。

 久しぶりに2人でこうしてゆっくり過ごせている気がする。


「楽しかった?」

「はい、久しぶりに。類くんは、接待お疲れ様です。」

「早めに終わって良かった。無理に抜けてきたが正しいけど。」

「何でですか?」

「早く帰りたかったから。後、君が飲みに行くって言うと毎度碌な事無いから迎えに行けるように。」


 再三類くんの前でお酒はやらかしているから否定できない。

 それも交際前にやらかして、2度程家に連れ帰られている。

 それから飲み会の度に迎えに来てくれる。

 情けなさすぎる…。


「でも、そんな心配してなかった。水無月さんはしっかりしてるし、君が飲み過ぎそうになっても止めてくれるだろうなって。」

「志織ちゃんは本当にいい子なんです。」

「君が自分で制御しなよ。」

「それはごもっともなんですけども。」


 こんな会話も久しぶりで、なんてことない会話なのに幸せで仕方ない。

 2人で話して笑っているこの時間が好きだ。
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